ドクショル講演会2017


 平成30年2月10日ドクショル講演会が、40名の参加者を得て行われました。

●日 時:平成30年2月10日(土)10:30~12:10
●テーマ:「岡山はどんなところ? -生物・地質・地形・歴史-」
●講 師:波田 善夫
●場 所:岡山理科大学A1号館2階A0122講義室
●参加者:40名(学外の方33名+学内の方7名)


◆開会の挨拶◆

 まず、最初に岡山理科大学図書館長榊原道夫先生より開会の挨拶と講師の波田善夫先生の紹介があり、講演会が始まりました。


◆講演◆

「岡山はどんなところ? -生物・地質・地形・歴史-」
波田 善夫(岡山理科大学第7代学長、岡山理科大学名誉教授)

 手始めに、岡山には国立天文台がありますが、なぜ岡山に大きな天文台があるのでしょうとの、問いかけがありました。5択のクイズ形式で参加者に答えてもらいながら、話が進みました。答えは「大気が安定しているから」。

 また、「晴れの国、岡山」のキャッチフレーズがありますが、岡山の年間日照時間は全国15位、快晴日数は14位、年間降水日数は46位、降水量1㎜未満の日数が1位と、晴れの国というより、雨降りの日の少ない国であることが紹介されました。

 次に、塩田が多く作られたのは何故、と問いかけられました。答えは、「冬に雪が少ないから」。何故かというと、専業の製塩が行われるには、1年中塩を作ることができるのが必須となり、夏に雨が少なく冬に雪が少ない岡山は、製塩に適している土地といえるそうです。

 岡山は果物王国というイメージあります。桃やマスカットが有名です。ところで、日本で一番栽培されている果物はなにでしょうか。答えは、「温州みかん」。生産量1位から順に、ミカン、リンゴ、柿、栗、ブドウ、梅、梨、スイカ、桃、メロン・・・。岡山ではどれくらいミカンは作られているか?・・・ミカン生産量は1位から、和歌山県、愛媛県、静岡県、熊本県、佐賀県、広島県・・・で岡山は20位にも入っていません。

 何故、岡山ではミカンが作られないのでしょうか。実は、岡山の気候は、夏は暑くて、冬は寒いという内陸型の気候であり、ミカンのような常緑樹は冬に葉が凍ってしまい、栽培には不向きな気候といえるからだそうです。確かに生産量上位の県は黒潮の影響で冬も暖かい地域です。また、島や海の見える沿岸地域とも言えます(沿岸地域は零下になりにくいそうです)。桃やマスカットは落葉樹なので、岡山での栽培に向いているものなのです。

 桜の開花時期は、東京では卒業式頃、岡山では入学式ころと、東京に比べ岡山の春は遅い→冬は寒いことが、これからもわかります。

 ここまでの問いの答は全て気候がキーになっているようです。
 吉野川下流の備前長船は日本刀で有名ですが、何故長船で日本刀がたくさん作られるようになったのでしょうか。選択肢①良質な砂鉄が取れたから、②刀を作るのが上手な人がいたから、③薪がたくさんとれたから、④交通の便が良かったから、⑤刀を持つ武士がたくさんいたから。さてどれでしょう。

 古墳時代には総社市付近で製鉄が行われていたそうです。奈良時代には鉄鉱石による製鉄が盛んになりましたが、平安時代に掘りつくしたようで、鎌倉時代から砂鉄による製鉄が行われるようになり、江戸時代からはたたらによる製鉄が盛んになったそうです。

 たたら製鉄には、砂鉄と大量の薪(森林)と水(川)が必要であったそうです。備前長船では、砂鉄は取れませんが、砂鉄の取れる中国山地から玉鋼を運んできやすかった地であるようです。

 砂鉄の元である花崗岩に注目してみると、山陰花崗岩は磁鉄鉱を多く含み、山陽花崗岩はチタン鉄鉱を多く含んでおり、中国山地は良質な砂鉄が多く取れる土地であることがわかります。花崗岩には1~3%砂鉄がふくまれています。花崗岩の風化土壌の「真砂土」を掘り、水の流れを利用して比重の重い砂鉄を選別する、かんな流し(鉄穴流し)により、砂鉄は取り出されていました。このため、大量の土砂が川で下流に流されることとなりました。岡山平野の児島、連島、玉島など昔は島であったものが、川の上流でたたら製鉄が盛んにおこなわれ、それで排出された土砂が堆積し、陸地となって繋がったものです。

 たたら製鉄をすることにより、意図しない壮大な地形改造が行われたといえるようです。瀬戸内の気候は地中海気候に例えられることもありますが、たたら製鉄の排出土によって埋め立てられ内陸型の気候(夏は暑くて、冬は寒い・・・どこかで出てきましたね)に変わってしまったようです。

 岡山の特徴と思われるいろいろな物が、気候に起因するものであることは前半で見てきたとおりですが、その岡山の気候は、たたら製鉄が上流で行われた結果、地形も変えられ、気候も変えられてできあがったものだったという話で、講演会は終了を迎えました。

講演会のあと、質疑応答が行われました。

Q.自然にできた堆積土壌の平野と、たたら製鉄によりできた土壌の平野では何か違いがありますか?
A.濃尾平野のような自然にできた平野と、岡山平野を比べると、砂の粒が岡山の方が大きいといえます。