ドクショル講演会2018


 平成30年11月24日ドクショル講演会が、45名の参加者を得て行われました。

●日 時:平成30年11月24日(土)13:00~14:20
●テーマ:「もしも酸素原子が宇宙の歴史を語ったら」
●講 師:石坂 千春(大阪市立科学館主任学芸員)
●場 所:岡山理科大学岡山キャンパスA1号館2階A0126講義室
●参加者:45名(学外の方23名+学内の方21名、不明1名)


◆開会の挨拶◆

 まず、最初に岡山理科大学図書館長榊原道夫先生より開会の挨拶と講師の石坂千春先生の紹介があり、講演会が始まりました。


◆講演◆

「もしも酸素原子が宇宙の歴史を語ったら」
石坂 千春(大阪市立科学館主任学芸員)

 さて、今日の主役酸素原子についてです。
 人の体を構成している酸素原子はいくつでしょうか(1400×1024個だそうです)。
 1日に人が呼吸する酸素原子はいくつでしょうか(2×1026個だそうです)。
 そして、体中の酸素は約1か月で入れ替わるのだそうです。

 酸素は、石の中、川、海、雲、空気の中にあります。
 地球の成分を元素の比率でみてみると、鉄35%、酸素30%、ケイ素15%、マグネシウム13%だそうです。空気(O2, CO2)←→生物←→水(H2O)と循環しているものと、石(SiO2)のように固定されているものがあります。


 さて、地球のO2はいつ生まれたでしょう。・・・生命が誕生した約38億年前と考えられます。熱水鉱床でバクテリアが生まれ光合成により酸素分子が排出されるようになったそうです。酸素分子を作り出すのは生物だけです。35億年前に植物が現れ、O2を体外に捨てるようになり、酸素分子が大気にたまるようになったそうです。

 では、それ以前はどうでしょう。40億年前の地球はクレーターがいっぱいの状態でした。地球が誕生した46億年前は小惑星(岩の塊、その中に酸素が)やほうき星(泥や氷の塊、その中に酸素が)が衝突して惑星が誕生しました。ですから、地球以前の酸素は宇宙にあったと言えます。

 宇宙で星が生まれる場所は、星雲(漂うガスの塊、-200℃、密度は大気の1億分の1)です。星雲が暖まり密度が増すと星の卵が生まれます。
 生まれたばかりの太陽は回りに原始惑星を連れていましたが、太陽系で地球になったのは0.0003%、99.99%が太陽に、1%が木星になったそうです。
 太陽の材料は、水素70%、残りはヘリウム、酸素は水素の1/1000しか含まれていません。

 地球の前は、酸素原子は星の中にあったと言えます。
 星の寿命は約100億年。ただし重さが2倍になれば、寿命は1/4になります。星では元素が新しく作られています。核融合で、4つの陽子→ヘリウム→ベリリウム→炭素→酸素→・・・→鉄までが作られます。この酸素がどうやって外に出てきたかというと、鉄が星の核になると収縮が始まり、限界を超えると、超新星爆発が起こり、星雲が出来ます。この爆発の過程で外に出てくるわけです。この星の生と死は繰り返されることになります。


 天の川銀河は、半径10万光年、2000億個の星で構成されています。観測できる銀河は約2000億個あるので、太陽は宇宙の1/2000億×1/2000億であるといえます。
 銀河の誕生は120億年前、最初の星(太陽の約100倍の重さ)の誕生は130億年前、一番古い酸素は133億年歳といわれています。

 酸素は陽子8個と中性子8個で構成されています。陽子はいつできたのでしょうか。それは138億年前のビッグバンの初めの3分間に陽子とヘリウムが生まれたといわれます。だから陽子は138億歳です。

 酸素がたどった歴史をまとめてみると

・138億年前 光→陽子
・133億年前 最初の酸素原子
・100億年前 天の川銀河の完成
・50億年前 太陽になる星雲の中
・46億年前 地球誕生
・38億年前 生命誕生
・400万年前 人類誕生

という事になります。私たちの体は、宇宙の歴史そのものでできていると言えます。


 最後に質疑応答があり、大学生からだけでなく、小学生からも質問がだされ、約10名が20分の間質疑応答に加わりました。

その1つを紹介します。 Q)星の中で鉄までしか融合されませんが、鉄より重い原子はどうやって作られたのですか。
A)超新星爆発の際に様々な原子に中性子がぶつかり、くっ付くことで鉄より重い原子は作られます。超新星爆発前は鉄まで、その後はその他の原子が形成されたと言えます。