岡山県大学図書館協議会平成20年度第三回研修会報告書


1. 開催日時:平成21年1月26日(月)13:00~17:00
2. 場  所:ノートルダム清心女子大学附属図書館
3. 参 加 者:県内18大学30名
4. 司  会:藤原 智孝(岡山大学)
5. 書  記:奥田 寿生(岡山商科大学)
:榎本 修(岡山理科大学)
6. 内  容:レファレンス技法の諸相

(1)開会
(2)講演:レファレンス技法の諸相について
(3)閉会

(1) 開会
 ノートルダム清心女子大学附属図書館事務部長 篠原孝房氏より開会の挨拶が
あった。

(2) 講演:レファレンス技法の諸相について
講演者 井上 真琴氏(財団法人大学コンソーシアム京都 同志社 大学)
Ⅰ.レファレンスの何が難しいのか
 情報化時代と言われて久しい現代だが、情報が「偏在」から「遍在」へと変化 してきている。専門の場所でしか得られなかった情報が、今や生活の中で溢れか えっている。それに伴い、大学図書館のあり方も変化を強いられている。従来の 『"資料"のアーカイブセンター』から、『"調査""課題解決"のソーシャルセンタ ー』へというものだ。この変化は大学図書館員の在り方にも影響し、情報源であ る資料の提供やチャンネルの使い分け(評価・選択)といった思考の水先案内人 としての資質が求められている。
Ⅱ.探索の基礎的視点とニーズの把握
 レファレンス担当者に必要なことは、相談者とのコミュニケーションの中で、 相談者が何を問題とし、何を解決したいかを知ることだ。  その上で、相談者が知悉している情報だけで十分であるか。もし不十分である ならば、どのようにして必要とする情報にアプローチしていけばよいか。また他 の視点からのアプローチの仕方はないか、等一歩踏み込んだ指導ができることが 望ましい。
Ⅲ.レファレンス技法の三層
 レファレンスの方法として、三層のスキルがあると考えている。第一は情報源 を知る(何があるのか)こと。第二は情報源の使い方を知る(どう使うのか)こ と。第三は総合化した情報源利用をする(なぜ使うのか、どう組み合わせるのか) ことだ。この3つのスキルを駆使し、順次深層化することにより、問題解決の方 法が明確化される。  休憩の後、具体例を基に、情報源としての事典類やインターネットの使い方、 及びその時の注意点。更に収集した情報(ベタ)を問題解決の方法(メタ)へと どのように導いていくかの解説があった。
Ⅳ.情報源へのアプローチ
①情報源を知る
 レファレンスの重要な点は『ツール』ではなく『学識』である。全ての分野に おいて学識者たることは難しいが、急造の学識者たることは必要である。その為 にはどうするか。相談者から与えられた一つのヒントを基に、あらゆる関連事項 (キーワード・作者名・出版社・年号等)の探索方法を知っておくことが大切で ある。
②情報源の「使い方」
 情報源の検索の仕方一つでも大きく違いがでる。例えばジャパンナレッジの検 索項目に、「見出し」→「見出し+キーワード」→「全文」と入力条件を追加する と関連項目が増え、問題を考えるときの視野の拡大に繋がる。ただ検索エンジン (グーグル等)で検索するときは、クローラーがインデックスした部分のみを検 索していることに注意する必要がある。外国の文献を検索するとき困難を伴うこ とがあるが、コトバをヒントに、情報源のありかを予測してキーワードを設定す る等、検索エンジンの特性を正しく認識し使いこなせば、有意義な検索ができる。
③総合化した情報源利用をする
 さらに上級化したものとして方法論的段階(メタ認知力)がある。アナロジー を利用する方法であるが、例えば『北陸地方の妙見信仰の分布を知りたい』とい うテーマであれば、地名・神社・お札コレクション・北陸各県の地域資料をあた り、糸口を見付けるという方法である。また、類似の研究論文の方法論を参考に 調べ方を見付けていくのも良い。時間はかかるが、何らかの成果が得られること がある。
Ⅴ.「情報源の紹介」から「(調べ方の)考え方の紹介へ」
 時代の変遷に伴い、情報源や事実調査という「ベタ」から、方法・考え方という 「メタ」まで踏み込んだ指導が必要とされている。その時問題となるのが、レファ レンサーの価値観が入って良いのかということであるが、相談を受けた段階で何ら かの価値観が入っており、これを取り除いての指導というのは不可能である。根拠 となる典拠情報を意識した、情報評価の視点を持っていることが必要である。  また資料によっては、相矛盾する記述もあり、裏付けを取ることにより、誤りを 正していく必要もある。
質疑応答  講演を受け、以下のような質疑応答が行われた。
質問①  カウンターでのレファレンス時、内容はわかるが解答を出せない、解答がわから ない質問を受けるときがある。このような場合どのようにされているか。どこまで 質問者に係わるか(引き際をどのようにするのか。)。 回 答  経験的には10分位話を聞けば、情報源としては何があり、それをどのように活用 すればよいかはわかる。ただし、視点がずれていて、資料が無いときもある。無い ということを証明するのは難しいが、外部のデータバンクや専門図書館に問い合わ せたりして無いことが確認できれば、はっきり無いという。 質問②  絵本であることはわかっているが、本の名前とか中身もわからないが探してほし いという相談がある。どうしたら宜しいでしょうか? 回 答  出版が提供した目次・あらすじ情報を扱っているソフトもある。それを利用し 「Webcat Plus」から探す方法がある。出版社が分かれば、出版社に問い合わせる のも良い。
(3) 閉会  司会者 藤原智孝(研修委員長)より挨拶があり閉会された。 以上


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